離婚が認められにくい場合とは
ご相談時に、「有責配偶者」という言葉を相談者から聞くことがあります。
インターネットなどで、ご自身でもいろいろお調べになっていることもあるのだと思います。
今回は、この「有責配偶者」とは何か、どのような問題があるのかをご説明します。
1 有責配偶者とは
有責配偶者とは、自分で婚姻の破綻を招いた側の配偶者をいいます。
代表的な事例としては、不貞が原因で結婚生活が破たんした場合には不貞した配偶者、暴力が原因で破綻した場合には暴力をふるった配偶者ということです。
単に、お互いに性格が合わずに破綻したというような場合には、どちらか一方が悪いというわけので、有責配偶者ということにはならないことが多いでしょう。
2 有責配偶者からの離婚請求は認められるのか
有責配偶者からの離婚請求を認めるかどうか、およそ裁判例をまとめると、下記の点が問題となります。
そもそも、夫婦が長期間別居し、客観的に婚姻が回復不可能な状態に達し破綻したと認められる場合には、離婚が認められるのが原則です。
しかし、例外として、有責配偶者からの離婚請求が信義誠実の原則に反し、許されないと判断すべき場合には、離婚は認められません。
そして、有責配偶者からの離婚請求が認められるかどうかについては、次のようなことが検討されています。
(1)夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及んでいること
(2)夫婦の間に未成熟の子がいないこと
(3)相手方配偶者(有責配偶者でないほう)が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて過酷な状況におかれるなど離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情が認められないこと
(1)の別居期間は、年齢や同居期間との関係から相対的に判断するものですが、おおむね10年を超える場合には、期間としては長期間と認められています。
それより短い場合では、年齢や同居期間を考慮して具体的に判断されることが多いです。
裁判になるケースだと、おおむね6年くらいから具体的事情に応じて「長期間」の別居と認められる場合が出てきます。
つまり、別居期間が6年未満だと「長期間」というのは、なかなか難しい。
6年~10年だと、具体的事情によって、「長期間」と認められたり、認められなかったりする。
10年以上だと、「長期間」と認められることが多い。
長期間の別居がある場合でも、当然に離婚が認められるわけでなく、(2)(3)の点を検討します。
未成熟子や経済的な状況等は、個別具体的な事情により、未成熟子がいるから絶対に認められないというような関係には立ちません。
その離婚を認めることで、(特に経済的に)過酷な状況に立つ人がいるかどうかを判断され、もし、そのような状況に立つ人がいる場合には、離婚時の条件等(財産分与や慰謝料・養育費)で、相応のケアがなされるかどうか、判断がされることになります。
3 協議の場合
以上は、話し合いがまとまらず、判決までいくケースでの考慮要素であり、たとえ有責配偶者からの離婚請求であり、別居期間が短いケースであっても、相手方が離婚に応じてくれて離婚が成立するケースも多く見受けられます。
話し合いでまとまるかどうかは、やはり、その離婚が成立することで、経済的に過酷な状況に立つ方がいる場合には、それ相応のケアがなされるかどうかが、一つのポイントになっているように思います。
4 今後の流れ
離婚を認めるかどうかの裁判例は、もちろん、社会が結婚に何を求め、皆がどのような結婚観に立っているのかなどを反映してか、流れは変わっていく可能性があります。
価値観の多様化を受けて、今後、上記の流れが変わっていくことは十分ありえます。
最高裁判所は、昭和27年に、有名な「踏んだり蹴ったり判決」と呼ばれる判決をだし、有責配偶者からの離婚請求について「もしかかる請求が是認されるならば、被上告人は全く俗にいう踏んだり蹴ったりであある。法はかくの如き不徳義勝手気儘を許すものではない。道徳を守り、不徳義を許さないことが法の最重要な職分である。」と判断しています。
しかし、その後、有責配偶者からの離婚請求を認める判決が出て、上記の判断基準が形成されてきました。
結婚生活が破たんした場合にも結婚という形式を守るのかどうか、弁護士としては、裁判例を注視しています。
もっとも、個別のケースでどう決着すべきかは、ケースバイケースです。
夫婦関係をどう清算するか、100組の夫婦があれば100通りの方法があるはずです。
弁護士に具体的に相談してください。